2016/06/08

YTAMO:MI WO chan no TABI


 リリース以来、YTAMOのアルバム『MI WO』をよく聴いている。柵を越えて外に出て行く音の群れ、抱えようとしてもふわふわと捕まえきれない光る音。いろんな音が自律的に思い思いに動いているようで、これは、どこにもない戸外の音楽だなぁと梅雨の晴れ間を見上げて思う。思えば世界ってそんなものだ。
 聞けば、この『MI WO』も、先日リリースした松井一平、元山ツトムとの共作盤『don't light up the dark』と同じく、あるアーティストの展示のためにつくられた音楽だという。ちなみにこちらのジャケットのアートワークも松井一平によるもの。自然の風物をキュビスムの方法で表現したような不思議な絵を見ながら、ぜひ『don't light up the dark』と一緒に聴いてみることをおすすめします。
 そういえば、彼女の11年前のファースト・アルバム『Limited Leaf』をあらためて聴いてみると「よっ」とか「ほっ」とか楽しい掛け声が出てきて、そんな呼びかけはレイチェル・ダッドの『We Resonate』や、嶺川貴子とダスティン・ウォングの『Savage Imagination』、コルネリの『かいづか』等々にもあったような気がするし、ひいてはASUNAがライブ・パフォーマンス後半のピークでマイクを両手で包みながらスマーフ男組みたいなチップマンク声でビュービュー叫ぶ姿も連想してしまった。さらには遠くの砂漠からベルベル族の大きな叫び声がかぶさってきて……。
 きっと彼女ら彼らにはどこか共通する気風、さらに言えば、ある種の特別な念じ方みたいなものがあるのかもしれない。サイケデリックというよりはサイキック、不安定だけれど倒れない積み木は美しい。というわけで以下の日程で『MI WO』のツアーが始まるので、それを早速確かめに行ってこようと思います。

ココノネ空間 vol.2
6月18日(土)大阪 アオツキ書房
出演:YTAMO、嶺川貴子Yabemilk
DJ&音響:青柳亮(HORA AUDIO
開場 6:30pm/開演 7:30pm
料金 2,300円(予約)/2,800円(当日)

ココノネ空間 vol.2
6月19日(日)彦根 horaana
出演:YTAMO、嶺川貴子オオルタイチ
DJ&音響:青柳亮(HORA AUDIO
開場 2:00pm/開演 3:00pm
料金 2,000円(予約)/2,300円(当日)*ドリンク代別

YTAMO MI WO chan no TABI
6月21日(火)東京 七針
出演:YTAMO × 松井一平(ドローイング)、嶺川貴子&Dustin Wongトンチ × オオルタイチ
開場 7:00pm/開演 7:30pm
料金 2,500円(予約)/2,800円(当日)



YTAMO(うたも):荒木良子のソロユニット。クラシック・ピアノの世界を経てジャンル問わず2000年頃より活動開始。数枚の自主制作アルバム、2006年に「scilli disques」よりファースト・ソロ・アルバム『Limited Leaf』を発表。レゲエ・シンガー、カルカヤマコトのサポート・ミュージシャンとして活動後、自身のバンド「ウリチパン郡」のメンバーとして2011年まで活動(現在活動休止中)。2011年、オオルタイチとのユニット「オオルタイチ+ウタモ」として、キセルと共に東北ツアーを行う。この時、被災地へのチャリティとして共作「ともしび」を会場限定発売。同時にoorutaichi+ytamo「ihati ep」を発売。 2012年、フェリシティよりリリースされたOOiOOのドラマーであるOLAibiのサード・ アルバム『new rain』のレコーディング及びツアーメンバーとして参加。2015年、キセルのサポート・メンバーとしてライブに参加。現在はソロの他にオオルタイチとのユニット「ゆうき」としても活動。2016年3月にオーストラリアのルーム40/サムワン・グッド(国内盤はYACCA)より待望のセカンド・アルバム『MI WO』をリリース。さらに、松井一平、元山ツトムとの共作で、5月にアルバム『don’t light up the dark』をスウィート・ドリームス・プレスよりリリースしている。

2016/06/07

てぬぐい+mangneng と 川手直人


 こちらでアナウンスされましたが、今までなんどもなんども小さな演奏会を催させていただいた立川、砂川七番のギャラリー・セプチマが7月いっぱいで幕を閉じることとなりました。これもまたジェントリフィケーションのひとつと言うんでしょうか、でも、理由はともかくとして運営されてこられた波田野くんご夫妻には感謝の言葉しかありません。どうもお疲れさまでした。

 というわけで、というわけでもないのですが、久しぶりにギャラリー・セプチマでライブを催します。4月に「わらえないうそ わらっちゃうほんとう」という4曲入り7インチ・シングルをリリースした「てぬぐい」と(もちろんmangnengさんのスティール・パンもご一緒です)、昨年『デモデモデ』という奇なるCDアルバムをリリースされた川手直人さんが久しぶりに京都から上京(ちなみに今回予定されているのはこのライブだけ、お見逃しなくですよファンの方!)。どちらもたっぷりと演奏時間を設けつつ、その幕間はノアルイズ・マーロン・タイツのノコギリ奏者、森田文哉くんのDJをお楽しみください(彼が店主のレコード店、TURN ONの出店もあります)。さらに音響は、井手健介と母船のメンバーとしてもおなじみ、ティアドロップ型のサングラスが西東京No.1似合うスナイパー! ……もといギター奏者の清岡秀哉さんにお願いできることになりました。また、出演者それぞれとの縁も深い(てぬぐいの伊藤啄矢さんがギターの先生をしていたり)目白のブックギャラリー・ポポタムより大林えりこ店主もあれこれもって駆けつけてきてくれることに。

 せっかくなので久しぶりに外のウッドデッキで鉄板焼きも? たぶん梅雨明け前ではありますが、結果オーライでゆっくりのんびり過ごしていただければと思っていますので、ぜひ皆さまお越しください。夜に用事のある方も17時過ぎには終演の予定ですしご心配なく。いつものセプチマのイベント、砂川七番の夕方にお待ちしています。

6月26日(日)立川・砂川七番 ギャラリー・セプチマ
東京都立川市柏町 3-8-2
出演:てぬぐいmangneng川手直人
DJ:森田文哉(Noahlewis' Mahlon Taits
PA:清岡秀哉
出店:TURN ON(レコード、CD)、ブックギャラリー・ポポタム(本、雑貨)
開場 2:30pm/開演 3:00pm
料金 1,800円(予約)/2,000円(当日)
予約:スウィート・ドリームス・プレス(info.sweetdreams@gmail.com)、ギャラリー・セプチマ(galleryseptima@gmail.com
フライヤー・イメージ:mississippi


2016/06/02

Help Geneviève Elverum


 このスウィート・ドリームス・プレスのブログは2007年8月28日にはじまりました。その日、僕は3つ記事をアップしていたようです。ひとつ目の記事は、このブログを開設しましたよという簡単な挨拶。そして残りふたつはジュヌヴィエーヴ・カストレイという、カナダのケベック出身のコミック作家/シンガー・ソングライターの個展にまつわることでした。具体的には、その年の9月に目白のブックギャラリー・ポポタムで開催するジュヌヴィエーヴ・カストレイの「仮面」展にあわせて、彼女から届いた物販のお知らせでした。ひとつはTシャツ、もうひとつは各種レコードの紹介です。

 さらに、スウィート・ドリームス・プレスで最初にリリースしたものはジュヌヴィエーヴ・カストレイのポストカード・セットと、上記した「仮面」展のカタログ代わりの小冊子でした。どちらもその後売り切れてしまい、今、手元には在庫がありません。

 彼女の展示を手伝ったのはそれが二度目のことで、一度目は前年、彼女が初めて日本に来たときのことでした。壁に細いピンを差して、いちばん小さなダブルクリップで原画の上を2か所挟み、クリップの金属の輪っかをピンに引っ掛ける。そんな簡便で気の利いた展示方法に、さすがに手慣れたものだなぁと感心したことを今でも覚えています。そうして、その後に発行をはじめた『スウィート・ドリームス』誌のほうにもレギュラー寄稿家のひとりとして彼女には協力してもらい、ページ数こそ少ないものでしたが、彼女の繊細な筆致やそこはかとなくにじんでくるパンク精神、小さくてくるくると丸く連なる独特の書き文字、もちろん展示の際に披露してくれた率直な歌と演奏を僕らは毎回楽しみにしていました。その後、スウィート・ドリームス・プレスでお手伝いをした個展は「魔法使い」(2010年)、「解除と奔放」(2012年)、「HIVERS〜冬」(2013年)の3回、最初の「Sang Jeune」(2006年)を含めると彼女の展示は実に5回も開催することになりました。彼女は、だから僕らにとってはかけがえのない友人なのです。

 実は昨年の春から彼女はすいぞう癌と闘っています。今まではごく限られた友人だけ、そのことを知らされていましたが、今日、彼女のパートナーのフィル・エルヴラム(マウント・イアリ)が、下記リンク先に募金サイトを立ち上げました。ジュヌヴィエーヴと彼女の家族をお助けください。募金はもちろんですが、情報の拡散だけでもご協力いただけると助かります。彼女はスウィート・ドリームス・プレスにとって大切な人間です。何とぞ、よろしくお願いします。

以下、募金サイトに添えられたフィル・エルヴラムからの言葉も訳出しておきます。下手な訳ですが、どうぞお読みいただけると幸いです。

https://www.gofundme.com/elverum

ジュヌヴィエーヴ・エルヴラムと彼女の家族が癌から逃れられるようお助けください。

 2015年の5月、健康で素晴らしい娘に生を授けて4か月後、ジュヌヴィエーヴはもはや手術不可能なステージ4のすい臓癌であると診断されてしまいました。34歳の若さで、健康にとても気をつかっていた彼女にとってはまさに青天の霹靂でした。以来、彼女は化学療法はじめ、さまざまな治療を試してきました。地平線に落ちる光の少しでも前向きな部分を見据えながら。

 この1年少々というもの、我々は地域と家族一丸となって子どもの世話と食事、後方支援と金策に当たってきました。保険は医療費の一撃から我々を守ってくれましたが(とても高額な自己負担分のあと)、保険の対象外となるその他多くの周辺的な費用は、ふたりが自営アーティスト/ミュージシャンとして爪に火をともすように何年もかけてゆっくりと貯めてきた蓄えを完全に食いつぶしてしまいました。さらに今や僕らには子どももいます。

 ジュヌヴィエーヴは、10代のころから前途有望なコミック作家でした。ジュヌヴィエーヴ・カストレイの名前で、彼女は「l'Oie de Cravan」「Drawn & Quarterly」「l'Apocalypse」といった出版社から多くの本を発行し、この地球のあちこちで個展を開催してきました。彼女はまた、ウォーヴ(Woelv)とオ・パン(Ô Paon)という名前で音楽をつくり、世界中をツアーし、たくさんのアルバムをリリースしています(www.opaon.ca)。

 これを書いている、私、彼女の夫であるフィル・エルヴラムも、音楽をつくり、約20年にわたり、ザ・マイクロフォンズとマウント・イアリの名前でツアーをしてきました(www.pwelverumandsun.com)。

私たちはまた、ワシントン州アナコーテスに12年間暮らすカップルとして、インディペンデントのアート/音楽の豊かな世界的コミュニティにおける特別な場所を守ってきました。ここに住みながら、さまざまなプロジェクトに携わりつつ、私たちはワット・ザ・ヘック・フェスティバル(後のアナコーテス・アンノウン・ミュージック・シリーズ)を10年間オーガナイズしてきました。

私たちは自分たち夫婦のプライベートについては今まであまり公にせず、いつもそのときそのときのプロジェクトに邁進してきました。ツアーとフェスティバル、その他の公共的な営みを通して、私たちは自分たちのとても尊い家庭を守ってきました。そして僕らが経験する困難は今、ぶくぶくと泡立っています。

 今まで、自分の病状を公にしないことで得られる精神的安定や、それによってジュヌヴィエーヴにもたらされる心的ヴァイブのことを考え、このようなアナウンスやリクエストをすることは避けてきましたが、さすがに私たちの経済的苦慮も一線を超えてしまいました。

 どうぞ私たちに寄付をお願いします。私たちの家にいる者は誰も、この1年以上働くことができずにいます。ジュヌヴィエーヴは新しい作品をつくることができず、私(フィル)も音楽をつくったり、演奏したりすることができません。人生のすべてが、この途方もない闘病に費やされています(さらにこの不完全なふたりで子どもを育てなければならないという過酷な現実もあるのです)。これからの未来に何が待ち受けているのか、そしてこの不安定な状態がいつまで続くのか想像もつきません。いずれにせよ、この1年間に私たちが費やした金額だけで、我々はひとつの家族として大きな経済的窮地に立たされています。

 どうぞご寄付をお願いします。そしてこの情報の拡散にご協力いただけますよう、よろしくお願い申しあげます。