2012/09/27

Gofish - とてもいいこと


アーティスト:Gofish(ゴーフィッシュ)
タイトル:とてもいいこと
カタログ番号:SDCD-012
発売日:2012年10月15日
収録曲数:8曲
パッケージ:A式紙ジャケ(ダブル)

定価:2,000円+税 
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弦楽二重奏に浮かぶ静けさのシンガー・ソングライター
テライショウタ=Gofishの嘘のような本当の音楽

 はじまりはコントラバスとチェロとアコースティック・ギター、そして木訥としたテライショウタの歌声。どこか飄々とした軽み、温かみさえある室内楽タッチの「そらのかけら」で幕を開けるGofishのサード・アルバム『とてもいいこと』が完成しました。
 「ふたつの月」をピークとしてゆっくりゆっくり深度を深め、時折息苦しいほどに明度を落とす瞬間を経ながら、しかし、最後にはいつものように背中で手を振り、ひとり来た道を帰っていく……。『とてもいいこと』の妙味は、例えばそんなところにあります。

 前作『あたまのうえ』(コンペア・ノーツ)に続き、録音・ミックス・コントラバスに稲田誠(ブラジル、PAAP、バイクモンドほか)、そして、チェロに元細胞文学、現ゆすらごの黒田誠二郎を迎え、さらにドラムに山本達久(M4)、また、オルガンのドローンでasuna(M6)も参加。特にストリングスのアレンジを分け合う稲田・黒田とのトリオは、もはやひとつのバンドと言えるほど。それぐらい、このトリオでの楽曲には特別な輝きが備わっています。

 弦楽二重奏+シンガー・ソングライターというありそうでなかったトリオ編成の曲にも、語りかけるような歌い口が浮かぶフォーク・マナーの曲にも、さらにNICE VIEWでのテライショウタの姿が背中合わせに感じられる極限までのロング・ブレスにも、そのどれもに過度な装飾をひかえ、奇をてらわず、しかし目をそらさず、真っ直ぐ真っ直ぐに目標を見据え射抜いていくどう猛さのようなものが実は息をひそめているのです。
 古今東西の「ウィズ・ストリングスもの」でもなく、パストラルなプログレッシブ・ロックでもなく、ジョニ・ミッチェルの『夏草の誘い』でもなく……、Gofishトリオの頭の中以外、多分どこにもなかったシンガー・ソングライター・アルバムがここに誕生しました。嘘のような本当の音楽、小さな声でしか言いませんが、案外、小さな声にこそ真実があるのです。

Tracks
1. そらのかけら
2. 夢の速さ
3. ちいさくなれる
4. 迷路
5. 滑走路
6. ふたつの月
7. とてもいいこと
8. 明滅


Gofish - 夢の速さ by Sweet Dreams Press

2012/09/18

ナイーム・アモールのショート・インタビュー

ツーソン近郊のサワロ・サボテン

 この春にリリースされた1枚のアルバム、ジャイアント・サンドの拡張版とも言えるジャイアント・ジャイアント・サンドのアルバム『Tucson』。僕は2枚組の輸入盤アナログ・レコードを買ったのだが、それぞれのレコードを入れたスリーブには歌詞とオペラのト書きが掲載されていた。まだ全部を読み切ったわけじゃないけど、その歌劇はこうやって幕を開けるらしい。

ジャイアント・ジャイアント・サンドのアルバム『ツーソン』
国内盤はディスク・ユニオン~ファイアー・ジャパンより
ツーソン:カントリー・ロック・オペラ 
幕が上がるとサワロ・サボテンのたくさんのシルエット。サボテンの背後に巨大な黄金のミラー・ボールの太陽が昇る。朝となり舞台上の照明も明るくなり、サボテンがゆっくりとワルツをはじめる。何度か旋回したのち、その真ん中にひとりの人間がいることがわかるように離れていく。 
気のいい男の子のような白髪交じりの男が現われる。 
そして…。 
オペラがはじまる。
猫が群がるハウ・ゲルブ(ジャイアント・サンド)

この白髪交じりの男というのはやっぱりハウ・ゲルブか、な。悪魔のように角度のある眉毛にぼさぼさとかき上げた髪。そして、深い深いため息のような歌声。砂漠のルー・リードとかなんとか、それはともかく、あらためて自身が暮らす米アリゾナ州の町の名前をタイトルに、その気候や植生、人間模様や悲喜こもごもをオペラにまとめるなんて…。やっぱり舞台のある音楽っていいな。

とまれ、その現実のツーソン・ロック・オペラに欠かせないバイプレイヤー、ナイーム・アモールのことをより知ってもらうために、簡単なメール・インタビューをしてみました。アルバム『ダンソン』のサブテキストとしてどうぞ読んでみてください。個人的には60年代のシチュエーショニストのひとりが関わっていたというジェネラシオン・カオのことが気になったりも。とにかく、簡単なやりとりとはいえ、その一筋縄でいかない感じが、ところどころからでも感じてもらえれば幸いです。

にしても、リリースしたばかりの『ダンソン』ですが、本人自ら「似非ブラジル音楽」というように本場じゃない音楽家のちょっとしたいかがわしさが大きな魅力です。ツーソン周辺の渋いオルタナティブ・カントリー・ロック・ファンはもちろんだけど、むしろウィークエンドとか一時期のヴィック・ゴダード、ジャズ・ブッチャーやマックス・エイダー、それこそエブリシング・バット・ザ・ガールやスタイル・カウンシル、キッド・クリオール&ザ・ココナッツなんて懐かしい面々と並べて聴くのもオツだったりするんですよ、ね。ともかく、アルバム『ダンソン』についてはこちらをご覧ください。


『ダンソン』を言葉にすれば、似非ブラジル音楽の正統派ナイーム・アモール的アルバム、って感じかな。

■まずはあなたの子ども時代のことを教えてください。どんな音楽を聴いて育ったのか。そして今でも強く印象に残っている思い出があれば。
□パリ(18区)で育ち、両親は芸術家、父はパリ国立高等美術学校の教師だった。母も美術の教師で若いときはダンサーだったらしい。そんな両親が持ってるレコード、クラシックやジャズを聴きながら、ラジオでかかる当時のヒット曲も好きで聴いてたね。それに俺には音楽好きの親戚がたくさんいたんだ。祖父母、おじさん、おばさん、それからいとこ。休暇になると集まってみんなで演奏したもんだ。老いも若きも下手も上手も一緒にね。そこでは音楽をシェアすることが大事だった。ベストを尽くしてよい時間を過ごし、美味しい料理にありつくことがね。

■『ダンソン』の収録曲「Le Revenant」で、あなたはボードレールの詩に曲をつけていますね。セルジュ・ゲンズブールの60年代初頭の曲にも「ボードレール」という曲がありました。
□まさにその曲がそもそものアイデアの始まりだった。で、最初は単なるエクササイズで「Le Revenant」に曲をつけてみたんだよね。でも、そのエクササイズに手応えを感じてそのままアルバムをつくってみたんだ。ゲンズブールの影響はフランスにいると免れ得ない。どんな音楽のジャンルだろうが気にしないっていうことを彼のような人から学んだんだと思う。ただ自分の音楽をつくるだけ。『ダンソン』を言葉にすれば、似非ブラジル音楽の正統派ナイーム・アモール的アルバム、って感じかな。他にフランス人アーティストだと、レオ・フェレ、イヴ・モンタン、ボリス・ヴィアンといった名だたるシンガー、それ以外にもバーバラ、アンリ・サルヴァドール、アンリ・クローラ、ジャンゴ・ラインハルトといった人が好きだね。

■アメリカに移住して15年が経ちますが、それでも自分の中に残っているフランス性のようなものがありますか?
□俺は実際の自分以上にフランス人っぽくしようとしないから、驚く人も少なくないみたいだね(多分がっかりさせてるかも)。アメリカではベレー帽をかぶって口ひげを生やしたほうが人気者になれるからね。俺が自分のフランス性を感じるのはその感受性の点かな。ものごとの見方の違いや距離感、分析することへの強い情熱…。でも同時に俺はアメリカを正確に見ることができないんだ。アメリカにはワールドワイドな影響力があって、僕みたいなひとりのフランス人の中にもアメリカがある。移住してもう15年も経つしね。アメリカの文化ということでは、少なくとも音楽について言えばフランスよりもスポンテニアスで、フランスほど分析的な面は少ないように思う。ここで暮らして四六時中演奏してきたし、僕もアメリカのレベルに達したんじゃないかな。

■あなたが以前やっていたウィッチズ・ヴァレー、ジェネラシオン・カオといったバンドについて教えてください。
□ウィッチズ・ヴァレーはなかなかのサイケデリック・パンク・ロック・バンドだったよ。余り理解されなかったけどね。今でも聴けるアルバムが1枚あるはずだ。ジェネラシオン・カオは、単なるバンドというよりも大がかりなプロジェクトだった。役者や音楽家を交えた学生の一団だったんだ。60年代の状況主義者(シチュアシオニスト)だったマルク・オー(Marc'O)も関わっている政治運動のひとつでね。演者としてステージでどう動けばいいのかをそこで学ぶことができたし、音楽的にも作曲家のジャン・シャルル・フランソワと即興を主題に6年間仕事をすることができた。

■ちなみにマリアンヌ・ディッサードとはどうやって知り合ったのですか?
□ジェネラシオン・カオを通して知り合ったんだ。結局実現しなかったけど、彼女はジェネラシオン・カオのツアーをオーガナイズしようとしたんだよね。でも、俺はツーソンに移っちゃったから…。

■では、アモール・ベロム・デュオは?
□トーマス・ベロムもそのジェネラシオン・カオのメンバーだったんだ。で、一緒にツーソンに行かないかって誘ってね。で、俺と一緒に来ることになったってわけ。アモール・ベロム・デュオは2002年に活動をやめちゃったけど、いつか何かやろうぜっていつも話し合ってる。ただ、なかなか時間と機会がなくてね。

■そもそもツーソンに移り住んだ理由は? ツーソンのどんな点があなたを惹きつけたのでしょう?
□ツーソンだったら毎日プレイできるからね。家にいたままでも練習できるしさ。小さな町の利点だけじゃなく、大都会のダイナミズムもあるしね。もちろん60年代のキャデラックで町を流したりした日には…。

■15年前と今のツーソンに違いはありますか? 特に音楽シーンにおいて大きな変化はあったでしょうか?
□変化はいつもある。いろんな店がなくなって、新しくオープンして、出て行く人もいれば新しく移ってくる人もいる。ただ、一番大きく変わったのは世界そのものじゃないかな。2001年の9.11からすべてが変わっちゃったし、インターネット革命が人々の暮らしや音楽の体験方法を変えたしね。

■最後にハウ・ゲルブ(ジャイアント・サンド)、キャレキシコのジョン・コンヴァーティノやジョーイ・バーンズといった人たちについてコメントをいただけますか?
□ここに移ってきて最初に知り合った3人のことだね。ジョーイ・バーンズは最初に会ったとき、まだジャイアント・サンドでベースを弾いてた。キャレキシコはまだなくてね。彼のオープン・リールで、僕とマリアンヌ・ディッサードの曲を幾つか録音したんだよね。その後、彼らとは数え切れないほどの共同作業をしたよ。3人ともみんな素晴らしい音楽家で、最高に素敵な人間たちだ。

ツーソンを見て驚け、という言い回しがあるのだとか。

逆まわりの音楽 その1


さようなら。さて、スウィート・ドリームス・プレスは安永哲郎事務室と新しいライブ・シリーズを始めます。題して「逆まわりの音楽」。その第1回をご存じギャラリー・セプチマで10月13日(土)に開催します。歌、ギター、ゴルジェ、バグパイプ、ドローン、サイケデリアで巡るパラレル・ワールド・ミュージック。もしかしてもう一組出演者が増えるかもしれませんが、まずは概要を。ぜひ覗きに来てください。それではこんにちは。


逆まわりの音楽 その1

10月13日(土)立川・砂川七番 ギャラリー・セプチマ
(東京都立川市柏町3-8-2/多摩都市モノレール砂川七番駅より徒歩2分)

麓健一BAGPIPE BLASTOSHELLLAMEPHONE'S ATTC
DJ: Satoshi YashiroToki Takumi

開場 3:00pm/開演 3:30pm 料金 2,000円(1ドリンク込)

2012/09/12

Naim Amor - Dansons


アーティスト:ナイーム・アモール

タイトル:ダンソン
カタログ番号:SDCD-011
発売日:2012年9月15日
収録曲数:12曲
パッケージ:A式紙ジャケ(シングル)
歌詞対訳・アーティスト本人によるショート・エッセイ付き

定価:1,800円+税
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アリゾナ発デザート・ロック・シーンに舞い降りたひとりのパリジャン
ナイーム・アモールが砂漠で夢見たボサノヴァ・レコード

1997年、ひとりのフランス男が海を渡り、砂漠の真ん中に降り立ちました。そこはアリゾナ州ツーソン、男の片手には重そうなギターのハードケース。あとで分かることですが、そこにはスパゲッティ・ウエスタン風味の音響アンサンブルという密輸品が隠されていました。その媚薬はキャレキシコのふたりやハウ・ゲルブ/ジャイアント・サンドらの地元ギャングに手渡され、彼はツーソンきっての辣腕ギター奏者/ソングライターとしてメキメキと頭角を現わします。同時にドラマー、トーマス・ベロムとのアモール・ベロム・デュオ、そのデュオにキャレキシコのふたりを加えたA.B.B.C.といったプロジェクト、また、ソロ・アーティストとしてもこれまで2枚のソロ・アルバムに4枚の「架空の」サウンドトラックを発表し、実は「知る人ぞ知る」以上の充実した活動を彼の地で続けているのです。

そして、この『ダンソン』はナイーム・アモール3枚目のソロ・アルバムとなります。まずはアリ・バホーゾの有名なサンバ「ブラジルの水彩画」を思わせる冒頭の「Creole」をお聴きください。天高く駆け抜けるようなファルセット、途中から加わる口笛もゴキゲンです。ボサノヴァ~サンバのようでいて、ハワイアンやカントリーのニュアンスも随所に、果てはナイーム自家薬籠中の奇妙な音響加工も飛び出し……、とまさに曲名通りの心憎い仕上がり。さらに、テンポの速いサンバ・ジャズにミュゼットのアコーディオン、そこにウエスタン調のトゥワンギーなギター・ソロを被せるという彼ならではのタイトル曲も、エミリ・マルシャンとのデュエットに仕立てた唯一のカバー曲「Our Day Will Come」(オリジナルはルビー&ザ・ロマンティックス)もお聞き逃しないように。

まるでフレンチ・クオーターの喧噪が遠い異国のカルナヴァルに滲んでいくような、懐かしくもいかがわしいポップ・アルバムの愉しみに満たされて……。ぜひ、残暑残るうちに心ゆくまでお楽しみください。ちなみに「ダンソン」とはフランス語で「踊りましょう」という意味だそうですよ。

Tracks
1. Creole
2. Le Revenant
3. Dansons
4. The Day After
5. Time Is Real
6. On Se Tient
7. The Other Step
8. Son Grand Sourire
9. Our Day Will Comee
10. Sparkling Guitar
11. Waltzsamba
12. Si Tot

2012/09/03

秋の空のとてもいいこと


 東京は久しぶりの雨の日が2日続き、そのあとにすっかり当たり前のような顔で秋がやってきました。またこれから暑い日もあるのでしょうが、そこはそれ、秋の空です。

 さて、スウィート・ドリームス・プレスは10月15日にGofishのアルバム『とてもいいこと』をリリースします。このアルバムの音をショウタくんにもらって聴きはじめたのが6月だったので、ことしの夏は丸ごとこの『とてもいいこと』を聴いて過ごしました。その間に自宅/事務所を引っ越して新しい町にやってきたのですが(といっても隣の駅だけど)、今までよりも少し町中の部屋を借りたせいで朝起きて聞こえてくる窓外の音も聞き慣れず、実はいまだに旅行先のような気持ちでいます。でも不思議と、そういう地に足がつかない状態で聴く『とてもいいこと』はとてもいいものでした。じっくりじっくりゆっくりゆっくりと体が何かになじんでいくときに、とりわけこんな音楽が近くにあったことはとても頼もしいことです。かけがえのない作品って例えばこういうふうにそうなっていくんだね、きっと。

 それでは『とてもいいこと』とはどんなアルバムか。まだ皆さんには今すべてを聴いていただけないのに、ここでくどくどと説明するのは生殺しというか、まるで意地悪をしているような気分ですが、下記に作品の紹介用に書いた文章を掲載してみます。もし、実際に作品を手に取って耳にするまで必要以上の情報は要らないという方はここまで。もし、無駄に妄想を膨らませたい酔狂な方がいらっしゃったらどうぞ先へお進みください。


Gofish - 夢の速さ by Sweet Dreams Press