2012/08/31

松井一平個展『やせい』



本年3~4月にNo.12 Gallery(東京・上原)で開催された「ぞうえん」、重なるようにして始まった3~5月の「しゅくず」(於:東京・高円寺の音飯)に続く松井一平(TEASI、わすれろ草)の個展がはじまります。

タイトルは「やせい」、会場は浅草橋の天才算数塾です。春の展示は激しい雨の日もありましたが、あっという間にあれから4カ月、この激しい暑さの中、一平くんがつくりあげた作品が展示されます。上の写真を見る限り今回は立体作品がメインになるのでしょうか? ともあれ、作品のひとつひとつにそっと耳を傾けて見てください。会期中には作家本人も在廊していることが多いと思います。その人柄に触れる楽しみもご一緒に。

松井一平個展『やせい』
浅草橋天才算数塾(080-5084-0721)
東京都台東区浅草橋2-5-8
9月1日(土)~11日(水)
時間:正午~7:00pm
※入場時1ドリンク・オーダー(500円)をお願いします。

お問い合わせ:浅草橋天才算数塾

セプチマの<ポップ・アンダーグラウンド・ショーケース2012>



突然ですが、マップ/コンペアノーツ/なぎ食堂の小田晶房さんと「きのしー」こと木下夕希ちゃんの日々の妄想と夢と希望が現実化した<ポップ・アンダーグランド・ショーケース2012>なるライブ・シリーズのクロージング・パーティーをスウィート・ドリームス・プレスとギャラリー・セプチマでお手伝いします!

出演バンドはこの日を最後にちょいとおめでたい事情があって活動を一時休止する寄り道ライオット・ガールズ、おにんこ!。しかも、ゲストに、な、な、な、な、なんちょ…、いやなんと、stillichimiya(スティルイチミヤ)の屋台骨を支えるMC、BigBenをゲストに迎えたスペシャル・セットでのご登場です。そして『スウィート・ドリームス』の小説「ボサノバ」も大好評、<ポップ・アンダーグランド・ショーケース2012>本編にも欠かせない存在であるテニスコーツ(出演は9月12日・於神保町スタジオイワト)の植野隆司さんもお目見え、この日は演奏にBBQにと大忙しとなるようですヨ。ちなみにセプチマ名物のバーベキューはいつでも食材持ち込み大歓迎。食べたいものをその場で焼き焼きしちゃってください。ジュージュー、モグモグ……。
 ハッ……と気づけばここはバンコク化、カルカッタ化、ムシムシする夕暮れどきには限りなく自由なレゲ~ロックステディに腰がうずくAmephone's attcがお出迎え! さらにスッパパンドのアルバムも楽しみなスッパマイクロパンチョップ! 皆でこのなぞなぞだらけの音楽を心ゆくまで楽しみましょう。
 とここで時間を逆回転、ギャラリー・セプチマの幕開けはいつだってフムフムがホストなのでした。イノセントなガレージ・ロックは時々電圧が不安定、そこは笑って許してね。
 以上5組、出演の順番などお気になさらず頭からしっぽまで丸ごとお召し上がりいただければと。ただ、食べやすい音楽ばかりというわけでもございませんので、万一のどに詰まったら魅惑のバー給湯室へ。この日はちょいとトロピカルなスピリッツを用意するようです。

 といつものような、自分の身の回りに応用がきくセプチマのパーティーです。ぜひお友達や家族を誘っていらっしゃってください。ちょっと遠いかもしれないし、至れり尽くせりのサービスというわけにはいきませんが、自由気ままとまるでご町内のような雰囲気だけはありますヨ。

ちなみにギャラリー・セプチマはこんなところです。庭でバーベキューしたり、スイカ割りしたり、花火をしたり。
ライブ会場というよりは友達ん家のパーティーに顔を出す感覚でどうぞ。

9月23日(日)立川・砂川七番 ギャラリー・セプチマ
(東京都立川市柏町3-8-2/多摩都市モノレール砂川七番駅より徒歩2分)
出演:おにんこ! feat. BigBen (stillichimiya)、植野隆司Amephone's attcスッパマイクロパンチョップ、FUMU FUMU
開場 3:00pm/開演 3:30pm
料金:1,500円
*<ポップ・アンダーグランド・ショーケース2012>の出席スタンプ・カードにハンコ3つで無料
飲食:BAR給湯室、ふるまいバーベキュー(食材持ち込み大歓迎)あり
予約:スウィート・ドリームス・プレスギャラリー・セプチママップこちらの予約フォームより)

なお<ポップ・アンダーグランド・ショーケース2012>のその他の日程については以下をご覧下さい。

Pop Underground Showcase 2012


2012/08/24

Who's Naim Amor?


ナイーム・アモールとは一体誰か? ナイーム・アモールは1997年にアリゾナ州ツーソンにやってきたひとりのパリジャンである。しかも、写真を見る限りはちょっとした伊達男風。彼はギターやヴァイオリンを弾き、ちょっとしわがれた声で歌う。ハウ・ゲルブは「ナイーム・アモールは俺のお気に入りギタリストのひとりさ、以上!」と簡潔なコメントを寄せていたが、彼がツーソンのミュージシャン界隈にとって魅力ある「異分子」であることは確かなようだ。彼こそが「アヴァン・フレンチ・ポップ」とでも言うようなものを、ほかでもない「アメリカーナ」の震源地のひとつであるアリゾナの一都市に持ち込んだのだ。


以前キャロット・トップというシカゴのレーベルからアルバムを2枚リリースしていたアモール・ベロム・デュオというふたり組のことを知っているだろうか。彼らの作品は当時ライセンスされて国内盤にもなっていたし、つまり少しは注目を浴びていたのだろう。フレンズ・オブ・ディーン・マルティネスだとかキャレキシコだとか、荒涼とした砂漠風景を喚起させる目新しいバンドのひとつとして、また、彼の地を代表するジャイアント・サンドが『Chore of Enchantment』という傑作で大きく扉を開いた「アメリカン・ゴシック」なるものに、よりによってフランス人の身分で荷担した風変わりなバンドとして、ナイーム・アモールとドラマーのトーマス・ベロムのふたりは遊星からの物体Xよろしくフランスから舞い降り、すぐにツーソンの音楽シーンで頭角を現わしたのである。

ジャイアント・サンドの傑作アルバム『Chore of Enchantment』(2001年)

今から大体10~15年前、アメリカン・ゴシック、ポスト・ロック、アリゾナ、デザート・ロック、アメリカーナ……、まだたくさん残っていた紙の雑誌のページの端をそういった言葉が賑わしているときに彼らは活動していた。直接的にラムチョップやスパークルホース、デヴィッド・グラッブスやノエル・アクショテとのつながりを持ち上げた評も多かったように思うし(そういった人たちとアモール・ベロム・デュオはツアーしていた)、もちろん、キャレキシコのジョン・コンバーティノ、ジョーイ・バーンズ、ジャイアント・サンドのハウ・ゲルブやニック・ルカ、クレイグ・シューマッハといったツーソン周辺の敏腕ミュージシャンが実際にアモール・ベロム・デュオの作品に参加していることも、彼らを紹介する際に欠かせない便利な情報だったように思う。

アモール・ベロム・デュオの名前を一躍広めた同名セカンド・アルバム(2001年)

ともあれ、ナイームは相棒のトーマス・ベロムと一緒に物好きにもアメリカの砂漠の町にやってきたわけだが、しかし、まったくふたりでやってきたというわけではないらしい。実はアモール・ベローム・デュオにはもうひとり欠かせないメンバーがいた。作詞家としてグループに関わるマリアンヌ・ディッサード、不思議なことに彼女もまた10代でアメリカに渡ってきたフランス人で、ロスアンジェルスに住んでいたときのルームメイトが何とハウ・ゲルブだったらしい。元々映画を学んでいた彼女だが、ロスアンジェルス時代にはアレックス・コックスやグレッグ・アラキといった錚々たる人たちと交流を持っていたようで、1994年にはジャイアント・サンドのドキュメンタリー映画『Drunken Bees』を撮るためにツーソンに行き、そのままこの砂漠の町に居着いてしまったという。

才女、マリアンヌ・ディッサード

しかも、彼女はどうやってかパリ時代のナイーム・アモールと出会い、恋に落ち、人生の伴侶となった(数年前に離婚してしまったようだが)ばかりではなく、2000年代に入るとシンガーとして大きな賞賛を浴び、作詞家としてもフランソワーズ・ブルーに作品を提供するなど、充実した音楽活動を開始するのである。きっと相当な才女なのだろう。ともあれ、シャンソンとフレンチ・ポップをアメリカーナの乾いた水盤に浮かべる、という点では、ナイーム・アモールとトーマス・ベロム、そこにこのマリアンヌ・ディッサードの名前をセットで覚えておくのもいいだろう。


マリアンヌ・ディッサードが制作したアモール・ベロム・デュオのミュージック・ビデオ

なお『スウィート・ドリームス』のレギュラー寄稿家のひとりで日本通、映画『ローズ・イン・タイドランド』の原作者である作家ミッチ・カリンがツーソンにいたのも2000年代初頭だったのだろうか。夜な夜なホテル・コングレスという古いホテルに集まり、バーにたむろして、ステージではハウ・ゲルブやキャレキシコが入れ替わり立ち替わり演奏する……。重いビロウドのカーテンにペルシャ絨毯、ウィスキー、トータスのジョン・マッケンタイアが「ジャイアント・サンドのファンは本当に綺麗な女の人ばっかりで……」とうらやんだちょっと大人のポスト・ロックがそこでは日々展開されていた、のかもしれない。

ツーソンと言えば、このホテル・コングレス

ちなみにまだパリにいたころ、ナイーム・アモールとトーマス・ベロムはウィッチズ・ヴァリーというハードコア・バンドをやったり、ジェネラシオン・カオ(Generation Chaos)という実験的なパフォーマンス・グループに関わったりしていたらしい。彼はまたアモール・ベロム・デュオをABBC(アモール・ベロム・デュオにジョーイ・バーンズとジョン・コンバーティが加わったプロジェクト)というバンドに拡張させ、『Exsanguine』(2006年)『Sanguine』(2009年)『Dansons』(2012年)、以上3枚のソロ・アルバムと日々のスケッチ集とでも言えそうな架空のサウンドトラックを4枚リリースしている。もちろん、キャレキシコやデヴォーチカといったバンドの諸作品への客演もお忘れなく。と、活動の幅は随分広いが、どこかのサイトにナイーム・アモールが自身の音楽を表わした言葉としてこんな言葉が引用されている。「単語ふたつでいうと、伝統と実験、だね」。

2012年リリースされた最新ソロ・アルバム『Dansons』

さて、スウィート・ドリームス・プレスは、彼の3枚目のソロ・アルバム『ダンソン』を9月15日にリリースすることにしました。パリで生まれ、ツーソンで活動する男の、ロンドンの小さなレーベルから出たブラジル風アルバムの日本盤、というわけです。世界を巡り巡って見た夢は巡り巡ってこんな音楽になりました。よかったらおひとつ、その冒頭の曲を聴いてみてください。


Naim Amor - Creole by Sweet Dreams Press