2008/08/29

Introducing Ida 4. - Davin Brainard



そして、最後の3人目はデヴィン・ブレイナードという男性。これまでに紹介したふたりと多少、毛色が違うかもしれません。彼はミシガン州デトロイトに拠点を置くタイム・ステレオという面白レーベルや、UFOファクトリーという、昨年オープンしたギャラリー兼ライヴ・クラブをヒズ・ネーム・イズ・アライヴのウォーン・デフィーヴァーらと一緒に運営していることでも知られていますが、まずはアーティストとして紹介されるべき人でしょう。その手法はシルクスクリーンだったり、ステンシルだったり、もしくはそれらをキャラクターの形に沿って切り抜いてジオラマ風に仕立て上げたりといろいろなようですが、まずなによりも目を惹くのが、そこに登場するコミカルでポップなキャラクターたち。それと、バッジかなにかにして胸に飾りたくなるような丸々した雲たちです。

彼の作品は、先述のタイム・ステレオからの諸作品のパッケージや、同レーベルよりリリースされているアイダのリミックス・アルバム『Shhh...』にも使われていますが、さらに見ていただきたいのが上に紹介してるアイダの「Laurel Blues」のビデオ・クリップの愛らしさ。キャー! とはいえ、可愛い、愛らしいだけじゃなく、タイム・ステレオ自体、その奇天烈ノイズ・ミュージックで知られているだけに、ヒズ・ネーム・イズ・アライヴ同様、一癖も二癖もあるところがたまらんわけです。というわけでもうひとつ、今年の5月~7月にミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート・デトロイトで開催されていたUFOファクトリーのアート・ショー、その準備から完成までの模様(!)を早送りにした映像があったので、これを下でご紹介。段ボール・キッチンに手作りミラー・ボール……、当たり前のように手作り手作り手作り。いや、なんつうか、すごいわやっぱり。2001年、今はなき『電子雑音』の招聘による来日を見逃したのが悔やまれます。

2008/08/28

Introducing Ida 3. - Ida Pearle

では、アイダをめぐるグラフィック・アーティストのふたり目。それは『勇猛果敢なアイダのものがたり』の表紙アートも手がけているアイダ・パールという女性です。彼女は、アイダのサード・アルバム『Ten Small Paces』以降の一時期、ヴァイオリニストとしてアイダに加わっていたこともあるので(アイダなるバンドにアイダさん入っちゃうなんてちょっとしたマジックよね)、きっと彼女の名前を知ってらっしゃる方は多いでしょう。また、彼女はこれまで、マグネティック・フィールズ、ロウ、テッド・レオ・アンド・ザ・ファーマシスツ、フラッシュペイパーなどの作品やステージでヴァイオリンを弾いてきた経歴を持っています。そしてもちろん、アイダの『The Braille Night』やエリザベス・ミッチェルの『You Are My Little Bird』、テッド・レオの『Living with the Living』のカバーで使われている愛らしい貼り絵を手がけたのも、そのアイダ・パールでした。

彼女は、いまもニューヨーク暮らし。最近はミュージシャンとしての活動は控え、どうやらアーティストとしての活動に焦点を絞ったそうで、そのウェブサイトを覗いてみると「ファイン・アート・フォー・チルドレン」と銘打ち(こないだのタラ・ジェイン・オニールの日本での展示のキャッチコピーは「チープ・アート・フォー・プア・ピープル」だった:笑)、原画だけでなく、アルファベット・カードなどのステーショナリーが用意され、なかなかの人気を博しているようです。

にしても思うのは、下のブライアン・セルズニックにしても、このアイダ・パールにしても、また、チルドレン・アルバムをリリースしてきたエリザベス・ミッチェルにしても、「子どものための」としながらも、ありふれたマーケティングを逆手にとって、それだけにとどまらない器の大きさがあることです。それでいて最終的には素敵な「子どものための」に還流していく。こういうのって何かのたくらみではできないよなぁ、と、感慨にふける今日この頃。きっと、これから『BALLAD』という雑誌を発行しようとしているsaitocnoのふたり(今回、寄稿していただきました!)がやろうとしているのも、こういうことなのかな、と、楽しみにしているわけです。

2008/08/27

Introducing Ida 2. - Brian Selznick

それでは予告どおり、アイダというバンドを取り巻くグラフィック・アーティスト3人をご紹介します。まずはそのひとり目。今回、本をつくるうえではじめて知ったんですが、アイダの過去のアルバム作品を彩ってきたあのロゴ(上の画像:頭文字が大文字で、かすれたような線のエレガントなヤツ)って、ブライアン・セルズニックなる人がデザインしていたんですね。彼は、アイダのエリザベス・ミッチェルが通っていた(つまり、リサ・ローブも通っていて、ふたりでリズ・アンド・リサなるユニットを組んでいた)ブラウン大学にもほど近いロード・アイランド・スクール・オブ・デザインに通い、卒業後は絵本作家・イラストレーターとして活躍されている人。

これを機会に、邦訳されていた最新刊『ユゴーの不思議な発明』(アスペクト)ってのを手に入れて読んでみたんですが、最初こそその厚さに恐れをなしたものの(500ページ超)、ちびた鉛筆でカリカリと描いたような精緻なイラストとお話にあっけないほどすぐに読了。出版社の宣伝文句には「ハリー・ポッターにうんざりしているやつはこれを読め!」と威勢の良い言葉が並んでいますが、『ハリー・ポッター』を読んだことない自分でも素直に楽しめました。さらに、本書はコールデコット賞(アメリカ図書館協会が創設したアメリカ初の絵本賞)金賞はじめ多くの賞を獲得し、今後、マーティン・スコセッシが監督して映画化も決定しているとか。ともあれ、フランス映画草創期に活躍したジョルジュ・メリエスという実在のプロデューサーを登場させた虚実入り混じりのストーリーと、20世紀初頭のファンタジックなムードが混じりあう『ユゴーの不思議な発明』、ぜひ、ご興味ある方はご一読を。

ちなみに、アイダのあのロゴには別バージョンがあること(7インチ・シングルなどでは数度使われている)や、リズが大学時代演劇をしていて、ルー・リードの「ワイルド・サイドを歩け」を下敷きにした芝居で娼婦役(!)をしていたことなど、現在制作中の『勇猛果敢なアイダのものがたり』(あ、こういう書名になりました!)に楽しいエピソードを披露してくれています。秘蔵写真もいくつか送ってもらいましたので、お楽しみに。

2008/08/22

Introducing Ida 1.





かねてよりお知らせしていますが、現在、9月下旬に来日を予定しているアメリカのバンド、アイダについての単行本を制作しています。とはいえ、彼(女)らの音楽を知らない人だって多いでしょうから、これから数回に分けてご紹介していこうかな、と思っています。まず今回は、2005年にボストンのミュージアム・オブ・ファイン・アーツで録音された映像を4本続けてドンドンドン。ちょうど、前作アルバム『Heart Like a River』リリースにあわせての公演でしょうか。ステージ上、向かって右からベース/ピアノのカーラ・シックリー(元ビーキーパー)、ギター/歌のダニエル・リトルトン、ドラムのルース・キーティング(マラーキーズ)、ギター/歌/ハーモニウム/ベースのエリザベス・ミッチェル、ヴァイオリンのジーン・クックの5人編成で、このラインナップは、ちょうど来月の来日と同じ編成になります。とにかく、エリザベス~ダニエル~カーラの3人の歌声が重なる瞬間の素晴らしさを堪能していいただきたいな、と。それにジーンのドローニーなヴァイオリンも聴きどころのひとつでしょう。うんうん、うーむ。ため息。ふ~っ……。「ああ、こんなキレイなものがあるんだなあぁ」って思わない?





あらためて、来日ツアーの詳細はこちらをご覧ください。では、次回は、アイダを取り巻くグラフィックについて、です。

2008/08/20

In Our Talons



さて、海にがん太に温泉に、と、山陰の夏満喫のお休みから戻ってきました! 下の倉吉でのイベント「あなたの知らない世界」も、盛況のうちに終了とのこと。どうもおめでとうございます。で、こちらは早速、せわしく平常営業中。以前もお知らせしたアイダ来日に併せてのアーティスト・ブック制作に勤しんでます。気になる内容や貼付CDの中身は、これから追々お伝えしていくとして、今回ご紹介するのはバウワーバーズの新作プロモクリップ。これが精緻なパペット・アニメで、なかなかの見ごたえなのです。監督はアラン・プーン。見ていただくと分かるように、『Microcosmos』とか『The Planet Earth』などのドキュメンタリー・フィルムに想を負っているようで、これもまた手作業の執念を感じさせてくれます(鳥の羽300枚すべて手作りで、一ヶ月以上かかってるとか)。最終的に悪者は人間でほろ苦い部分もありますが、それでも、主人公の鳥や口づけしあうカマキリの姿・動きを見ているだけで、かなりボーっと……。いかん、仕事仕事。ではまた!

2008/08/14

夏季休業のお知らせ

8月15日(金)~18日(月)まで夏季休暇のため、スウィート・ドリームスのメイルオーダー・アドレス宛ての受注確認メール&入金確認メールの送信/商品の発送ができません。この期間中でもご注文いただくことは可能ですが、お返事が19日(火)以降になりますので、あらかじめご了承くださいませ。ちなみに、一時、在庫切れ状態だった創刊号は残り10冊、第2号の俵谷哲典エディションは残り3冊ですのでご希望の方はお早めに(どちらも先着順とさせていただきます)。では、皆様、よい夏をお過ごしくださいね。 

2008/08/06

あなたの知らない世界

子どものころのオヤツって、もちろん、カルビーだのブルボンだのもあったけど、ふろしきまんじゅうとか亀甲やの二十世紀とか打吹公園だんごとか、そういうのも意外に多かったよね。え? どこの話って? そんなの鳥取に決まってるじゃないか! というわけで、鳥取県出身者の端くれとして、下記の素敵なイベントで『スウィート・ドリームス』を販売していただけること、すごく嬉しいのです。開催地の倉吉市には上記の打吹公園があったり、白壁の土蔵が並んでいたりして、僕の実家がある米子より落ち着いた、ゆったりした良い町だったなあ、という印象があります。公園の近くの商店街にある金物屋さんがうちの親戚で、子どものころ、何度か行ったのでした。というわけで近在の方に関わらず、こちらとは比べ物にならないくらいキレイな海で泳ぐついででも立ち寄る価値大のイベントです。チーム・キャシーの面々が発行してきたすんげぇジンも各種並んでいるとのことなので、こちらもぜひ! 鳥取の狂犬=ボルゾイと、CDが出たばかりのSHIBATA & ASUNAも出るぞよ。残念ながら帰省の時期と合わず、僕は伺うことはできませんが、たぶん、僕と同じような顔立ちの人がぞろぞろいることでしょう。

TAM TAM & HIGH HAT RECORDS WORLD TOUR 2008
「あなたの知らない世界」

●日時
2008年8月14日(木)

第1部:14:30開場 15:00開演
フィルムペインティング ワークショップ

第2部:18:30開場 19:00開演

『Songs for Cassavetes』上映

トリレーベル×TAM TAM & HIGH HAT RECORDS トークセッション

ライブ演奏
SHIBATA & ASUNA(東京)
ボルゾイ+ASUNA(トリレーベル)

●場所
国登録有形文化財 豊田家住宅
〒682-0862鳥取県倉吉市西町2701

●料金
1,000円(第1部、第2部通し券)

●お問い合わせ
TAM TAM & HIGH HAT RECORDS

2008/08/05

アイダとバッハの意外なつながり

すでに知ってらっしゃる方もいるかもしれませんが、いま、9月下旬から予定されているアイダというバンドの初来日ツアーを記念して、スウィート・ドリームスの別冊を絶賛製作中です。

で、そのバンドの第3のメンバーであるカーラ・シックリーという女性ベーシストがいるのですが、彼女のことをいろいろ調べていたところ、「おお!」と驚いたことがひとつあったのでここで。

いつか、原稿にまとめてみたいなと思っていることのひとつに「捏造された音楽」というか、「でっち上げの音楽」というか、そういうのがあって、そこでたまたまP.D.Q.バッハという作曲家にぶつかったことがあるのです。それは苗字からもお分かりのように、ヨハン・セバスチャン・バッハの21番目にあたる末子(1742年生まれ)なのですが、しかし、彼は大バッハに音楽的な手ほどきを受けることが叶わず、父親から残された遺品もカズーがひとつだけという醜いアヒルの子でした。しかも、何を思ってか、師事したのもミュージカル・ソーの発明者(笑)。後に無事、作曲家になってからも、ほとんどが他の作曲家の盗作だった、という体たらく。

しかし、時代がめぐり、彼の膨大な作品は発掘され、ふたたび陽の目を浴びることになるのです。その発掘者こそ、南ノースダコタ大学の教授、ピーター・シックリーでした。シックリー……? カーラ・シックリー? そう。他でもないカーラの父親だったのです(ついでに言えば、当然、カーラがやっていたバンド、ビーキーパーのメンバーである兄のマシューの父親でもある)。

もちろん、このP.D.Q.バッハに関わるすべてはピーターの捏造ですが、その最初のLPである『An Evening with P.D.Q. Bach』がリリースされたのが1965年。その後、何枚も何枚も何枚も作品が出ていますので、ご興味のある方はぜひ。僕にしてもまだ数曲聴いた程度ですが、「セレヌード(もちろんセレナーデ+ヌード)」だの「爆笑ミサ曲」だの「エロティカ変奏曲」だの、その曲名からも内容は推測できるでしょう。また、ピーターはP.D.Q.バッハの作風を3つの時期に分けていてるのですが、それが「初期飛び込み期」「ずぶ濡れ期」「後悔期」というもので……。ここまでくると降参。カーラがアイダに持ちこんだもののひとつに、室内楽風というかバロック風の楽曲がありますが、それは、こういう家庭環境もあったんですな。それに、どこか人を食ったような、一筋縄でいかない展開を彼女が曲に仕掛けるのも親譲りなんでしょう。

また、ピーター・シックリーはクラシックだけでなく、ジョーン・バエズやバフィ・セント・マリーの弦アレンジなどもしていたそう。となると、こういった環境を背負ったアイダというバンドの存在感が、またひとつ広がるかもしれません。

なお、カーラは、オレゴン州ポートランドではじまったロックンロール・キャンプ・フォー・ガールズのニューヨーク版であるウィリー・メイ・ロック・キャンプ・フォー・ガールズの創設メンバーのひとりでもあり、ヴァイス・ディレクターとして日々、忙しく働いています。ちなみにそのキャンプの使命とは「ザ・ロックンロール・キャンプ・フォー・ガールズは、音楽をつくり、実演することで、少女たちの自信につなげようとする非営利団体です。わたしたちは、ワークショップと技術指導を提供することで、少女たちが積極性を身につけ、仲間や教師との相互扶助的なコミュニティをつくり、社会改良と生きる上での知恵を発展できるよう活動しています」というもの。うむ! カーラも「日本のキャンプはいつはじまるのかしら?」って言ってましたが、さて……。

ともあれ、製作中のアイダの別冊、詳しいことはまた後ほど!